RAWを知れば写真が変わる|初心者でもわかるRAWの意味とJPEGとの違い

ミラーレスカメラ等での写真撮影を始めると、よくYoutubeやSNSで「RAWで撮影しましょう」「RAW現像で思い通りの仕上がりに」といった言葉を目にすることと思います。この「RAW」って一体なんでしょう?

ミラーレスカメラの設定では、RAWとJPEGの二つの保存方法がありますが、そもそもこの二つの違いって何でしょうか?

プロやハイアマチュアの写真家がRAWで撮影しているからと、自分でもRAW撮影を試したことがある人も多いはず。でも「RAWで撮ってみたけど、なんか写真地味じゃね?」とモヤモヤした感想を抱いた経験、きっとありますよね?

実はRAW撮影は、撮影後の「現像」行程ありきの撮影方法です。RAW撮って出し(無加工での写真そのまま)では明るさも彩度も低く、まるでグレーのフィルターをかけたような地味な見栄えになってしまいます。

「せっかくミラーレス買ったのにスマホ写真の方が何だか映える…」とがっかりしている人には、是非この記事を最後まで読んでほしいと思います。

・なぜみんながRAW撮影を勧めるのか

・RAW現像で写真表現が広がる理由

・プロだけじゃない初心者だからこそRAW撮影で得られるメリット

・RAW撮影が向いているカメラの使い方とJPEG撮影の方が向いているカメラの使い方

がご理解いただけると思います。

※この記事は【RAW現像大全シリーズ】カテゴリーの一記事です。カテゴリー内の他記事も読み進めていけばRAW現像について体系的に理解が進みますので、是非他記事もチェックしてみて下さい。

目次

RAWJPEGの仕組みの違いをわかりやすく整理

RAWとJPEGの違いを説明します。

ざっくり例えるなら、

・RAW=“料理前の素材”(生の肉やカット前の野菜)

・JPEG=“調理済みの皿に盛り付けられた料理”(テーブルにサーブされた料理)

と例えることができます。

RAWは情報を残す、JPEGは圧縮される

ミラーレス等のデジタルカメラでは、センサーが得た情報は電子的にデータ化されます。その際、一次的にはRAWデータとして取り扱います。RAWデータはセンサー情報を“RAW=生の状態”でそのまま保存します。これがRAWです。

しかし、センサー情報はセンサーが受け取った光の情報を数値化しただけのものですから、人間の目で見えるものとは全く違います。このデータを人の目で見ても見やすいようにカメラ内部で自動的に調整(現像)し、不要なデータを削り取った(圧縮された)ものがJPEGデータです

つまり、

・RAWは情報がそのまま残る

・JPEGは圧縮される

という違いがあります。

これはそのまま、

・RAW=ファイルサイズが大きい

・JPEG=ファイルサイズが小さい

という違いにもなります。一般的にはRAWデータはJPEGと比較して4~5倍ほど大きくなります。

RAWは加工の手間がかかる、JPEGは手軽にシェアできる

先ほど、「カメラ内部で自動的に現像し、圧縮されたものがJPEG」とご説明しました。これは、JPEGならカメラが自動で現像までやってくれるので、自分で現像する手間がないということ。つまり、“JPEGなら撮影後すぐに画像をSNSや他人とシェアできる”というメリットがあります。

JPEGへの自動現像の味付けは、カメラメーカーや内部プリセット設定によって様々。いわばカメラそのものが料理人となり、お任せ料理を出してくれるイメージです。

一方でRAWは、撮影後に画像をパソコンで開いて、自分の手で現像する必要があります。そのために現像用のパソコンと現像ソフトを用意する必要があり、その点はデメリットと言えます。

JPEGを現像しようとすると画質が崩れやすい

同じ写真について、JPEGで書き出してからコントラストのみを強めた場合(左)とRAWのままコントラストのみ強めた場合(右)
森と空の境目のノイズをわかりやすくするため、800%に拡大

ところで、「RAWは現像が必要なことはわかったけど、JPEGは手動で現像できないの?」と思った人もいるかもしれません。

結論を言えば“できなくもない”と言えます。

先ほどから料理の例えばかりで恐縮ですが、JPEGを現像またはレタッチすることは、料理人が出してくれた料理を自分好みに手を加えることに似ています。多少の塩気やスパイスをきかせる程度のアレンジができても、焼き魚料理を煮魚料理に変えるようなことはできません。

JPEGはデータを削って圧縮しているわけですから、情報量が圧倒的に少ないため、露出や彩度、コントラスト等を変更しようとしても変更幅が少なくなります。無理に変更させようとすると、カラーグラデーションが崩れたり、ブロックノイズが出やすくなります。

一方RAWではJPEGに比べて保持している情報量が圧倒的に多いため、各パラメーターを変更しても自然な仕上がりとなりやすい(補正耐性が強い)のです

RAW撮影のメリットとデメリット|初心者が知っておくべきポイント

先ほど少し触れていますが、ここではRAW撮影のメリットとデメリットについて更に掘り下げて説明します。

RAWのメリット(階調・補正耐性・色の自由)

RAWのメリットを一言で言えば、編集の自由度が大きい(補正耐性が強い)と言う点につきます。一枚の画像の中に持っている情報量がJPEGに比べて多いため、大きく変更を加えても破綻しにくいのです。

例えば、夕日や逆光などの明暗の差が大きい写真であったとしても白飛び黒つぶれを補正したり、ホワイトバランスなどの色味を後から自然な見た目で変えられるため、表現の幅が広くなります。

撮影後の写真でも、後から編集で“思い出の空気感”を再現できる自由度があります。

RAWのデメリット(容量・手間・対応ソフト)

一方、RAWにも下記のようなデメリットと呼べる点は存在します。

・ファイルサイズが大きい

・現像に手間がかかる

・RAW現像ソフトにコストがかかる

この3点について解説します。

ファイルサイズが大きい

まず、情報量が多いと言うことはデータが重く、保存に容量が必要です。

同じ写真を撮る場合、JPEGと比較して一般的に4~5倍大きくなるため、カメラのSDカード容量には余裕を持った選択が必要です。

パソコンに過去の撮影データをとっておきたい場合にも、何万枚ともなってこれば保存方法を考える必要が出てきます。

現像に手間がかかる

また、RAWには現像という一手間がかかるため、JPEGのようにすぐSNS等に投稿するような利用ができません。

旅行写真など、一度にたくさんの写真を撮影した後に、一枚一枚をすべて現像しようとするのはなかなか骨の折れる作業です。一緒に旅行に行った友人や家族に、たくさんの写真をすぐにシェアしたいときには向かないかもしれません。

RAW現像ソフトにコストがかかる

さらに、現像にはRAW現像ソフトを使用する必要があり、その導入にもコストがかかるのはデメリットといえます。

RAW現像ソフトには、AdobeのLightroomやDxOのPhotolab、Capture One、Luminar Neoといった定番ソフトから、Sony Imaging Edge、Canon Digital Photo Professional、Nikon NX Studioなどのカメラメーカーが提供する無料ソフトなど様々なソフトがあります。

サブスク型から買い切り型、AI特化、プロ向け、初心者向けなど様々な個性があるため、自分にとってどれが一番良いソフトなのか選択するのも大変ですし、ソフトの操作方法の習熟にかかる時間的コストも必要です。

RAWはこんな人(使い方)に向いている

先に述べたメリット・デメリットから考えると、RAWは「一枚の写真を作品として仕上げたい」人に向いているといえます。

・後からじっくり編集して、一枚の作品として仕上げたい

・白飛び黒つぶれがあったら後から編集で補正したい

・ホワイトバランスを後からいじってその日に撮影したすべての写真に統一感を持たせたい

・風景の緑や空の青色、紅葉の赤など、コントラスト強めの写真に仕上げたい

このような目的がある場合は、RAWで撮影するのが適しています。

一方で、

・旅行やスナップ写真で気軽にたくさんの写真を撮ってシェアしたい

・パソコンでの画像編集は面倒くさい

と考える人にはRAWは向かないかもしれません。

初心者のうちからRAWに触れるメリット

“RAWについて学んでみよう”とこの記事にたどり着いた皆さんならきっと、

  • RAWで何ができるんだろう?
  • 自分もRAWで撮影した方が良いの?
  • RAWの方がきれいな写真が撮れるの?

と思っていますよね?

でも、もしかしたら、

「RAWってプロやハイアマチュアの世界でしょ」と一歩引いて見ているかもしれませんね。

RAWがプロやハイアマチュアの世界だなんてこと、全くありません。むしろ、初心者の方がRAWで得られるメリットは大きいのです。

そう断言できる理由を述べてみます。

失敗写真を救える

カメラを触り始めたばかりの頃は、撮影時にヒストグラムを見ながら、ハイライトとシャドウに気を配って露出補正をするなんてことはなかなかできないものです。

私も思い返すと、白飛び黒つぶれが目立つ写真を量産していました。

「せっかく良い構図で撮ったのに、惜しいなぁ~」とそっとデスクトップのゴミ箱アイコンに捨ててしまったり…。

でも、RAWで撮っていれば後から露出補正でなんとかなったりします。

特に黒つぶれはかなりの割合で復活できます。これだけでもRAW現像するメリットは大きいと言えます。

絵(写真)を構成する要素を学べる

RAW現像をするようになると、露出・色相・彩度・輝度・コントラスト・トーンカーブ・シャープネス・レンズ補正・ノイズ除去などなど、各種パラメーターを触るようになります。

これらパラメーターは絵を作っている要素(の一部)です。

どのパラメーターが、見た目にどんな変化を生じさせるのか、絵を構成する要素を自然と気にするようになってきます。

これらは写真を作品として仕上げるためには欠かせない知識となります。

撮影スキルの上達が早くなる

撮影時にRAW現像のことまで念頭に置いて撮影するようになると、

・白飛びは補正が難しいからここはアンダーで撮っておこう

・ブレは補正が難しいからシャッタースピードは上げておこう

・ノイズが出やすい状況だからISO感度はあまり上げすぎないようにしよう

など、いわゆる「勘」が働くようになります。

全くの初心者と違い、ダメな写真が分かるようになり、後からなんとかなる写真を撮れるようになります。

ただ撮って見るだけの繰り返しよりも、撮った写真のどこがダメだったのか考えるようになれれば写真の上達は格段に早くなります。

初心者におすすめ!RAW+JPEG同時撮影

ここまでRAWとJPEGの比較をしてきましたが、実は最近のカメラのほとんどがRAWとJPEGの両方を同時に撮影することができます。

同時に撮影というのは、シャッターを一度切ると、RAWファイルとJPEGファイルの両方を同時に保存してくれるということです。

この設定にしておけば普段は何も考えずに写真を撮影し、シェアしたいときにはJPEGファイルを利用し、後から編集したい写真が撮れたときだけRAWファイルを使って編集すれば良いのです。

この方法のデメリットは、保存容量を更に圧迫するため、容量に余裕を持ったSDカードを購入しなければならないことです。

またパソコンに保存するときにも、すべてのファイルを保存してしまうとSSDやハードディスクといった保存媒体の容量を圧迫するため、ファイルの移動時に取捨選択をする必要もあるかもしれません。

「いちいち選択するの面倒くさい!」と思う人は、大容量のメディアを購入するのも一つの手ですね。最近はメディアもだんだんと安くなってきていますので。

  • RAWとJPEG同時撮影のメリット:撮影後にJPEGで手軽にシェアしたり、RAWで詳細な編集が可能になる。
  • RAWとJPEG同時撮影のデメリット:保存容量を圧迫するため、大容量のSDカードや保存媒体が必要になる。
  • 容量問題への対策:大容量メディアの購入、またはファイルの移動時に取捨選択を行う。

まとめ|RAWを理解すると写真がもっと楽しくなる

RAWとは、カメラが捉えた“生の光の情報”をそのまま保存するファイル形式です。

JPEGのようにカメラが自動で仕上げるのではなく、撮影者が自分の手で明るさ・色・コントラストを整えることで、理想の仕上がりを作り出せるのがRAW現像の魅力です。

この記事で紹介したポイントをおさらいすると──

• RAWは“生データ”、JPEGは“完成済みデータ”

• RAWは情報量が多く、明るさや色を自在に補正できる

• JPEGは手軽にシェアできるが、編集の自由度が低い

• RAW現像を通して、露出・色彩・構図の理解が深まる

• 初心者こそRAW撮影を学ぶことで撮影スキルが伸びる

RAWで撮った写真が“地味に見える”のは、まだ現像という工程を経ていないから。

言い換えれば、RAWは「自分で作品を完成させるための素材」なのです。

現像を覚えることで、スマホでは表現できない深みや質感のある写真を作れるようになります。

初心者のうちは、「RAW+JPEG」設定で撮影するのがおすすめです。

JPEGで手軽にSNSへシェアしつつ、RAWでじっくり現像を練習すれば、少しずつ“思い通りの写真”に近づいていけます。

【RAW現像大全シリーズ】ではRAW現像について体系的に解説しています。他記事も読むことで理解が進みますので、是非他記事もチェックしてみて下さい。

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